アプリで出会って91日目、彼の寝顔を見て何も感じなくなった
Omiaiで出会って、2回目のデートで告白された。嬉しかった。でも91日後の朝、隣で寝ている彼の寝顔を見ても心臓が1ミリも動かなくて、私は天井を見つめたまま朝を迎えた。
好きだった。たぶん。
きっかけと背景
Omiaiでマッチしたのは去年の11月。東京の空気が急に冷たくなって、コートのポケットに手を突っ込みながらスマホを見ていた夜。プロフィールに「休日は喫茶店巡り」と書いてあって、私もちょうど神保町の古い喫茶店にハマっていた時期だったから、すぐにいいねを押した。
リョウくんは29歳、メーカー勤務。返信は早すぎず遅すぎず、ちょうどいい間隔で来た。絵文字は少なめ。でも時々送ってくる「笑」が、なんか好きだった。「今日の会議長すぎて死んだ」「笑 お疲れ」。この「笑」に愛嬌を感じた。不思議なものだ。
初デートは神保町のさぼうる。地下に降りて、赤いソファに向かい合って座って、クリームソーダを頼んだ。彼はグレーのニットを着ていて、メガネの奥の目が少し垂れていた。そこが好きだと思った。「メロンソーダ、大人になっても好き?」って聞いたら、「いや、初めて飲む。でもこの店はこれがいいって聞いて」って言って、ストローを差した瞬間にむせた。メロンソーダが鼻に入ったらしい。「やば」って小さく言って、目を潤ませながら笑った。その姿がおかしくて、声を出して笑った。笑いすぎて腹筋が痛かった。
2時間があっという間だった。お互いの仕事の話、大学の話、好きな喫茶店の話。彼は早稲田の近くの「カフェ・ゴトー」が好きだと言った。私は「ラドリオ」のウインナーコーヒーが好きだと返した。話が途切れなかった。
2回目のデートは表参道のイルミネーション。12月の金曜、退勤後に待ち合わせた。彼は紺のコートを着ていて、マフラーから顎が覗いていた。並木道を歩いてる途中で急に立ち止まって、「付き合ってください」って言われた。イルミネーションの光が彼の横顔を照らしていた。背中に走った電流を、今でも覚えてる。
「……いいよ」
声が震えた。手を繋がれた時、指先が冷たくて、でも手のひらはあったかくて、矛盾したその温度が心地よかった。表参道ヒルズの前で、繋いだ手をコートのポケットに入れた。彼の手は大きくて、私の手がすっぽり収まった。
最初の1ヶ月は、ずっとドキドキしてた。LINEの通知が来るたびに心臓が跳ねて、週末が待ちきれなくて、金曜の仕事中は時計ばっかり見てた。お弁当を作って彼の家に持っていったこともある。卵焼きがちょっと焦げたけど、「うまい」って言ってくれた。あの「うまい」の声のトーンが、耳の奥に残ってた。
2ヶ月目。少しずつ変わった。
転機になった出来事
彼の部屋でNetflixを見る。ご飯を作る。「今日何食べたい?」「なんでもいい」「じゃあパスタ」「おっけー」。この会話のループが増えた。別に嫌じゃない。でも、心臓が跳ねなくなった。LINEの通知を見ても「あ、リョウくんか」で終わる。以前は通知を見た瞬間に画面をタップしていたのに。
彼は変わってない。相変わらず優しくて、週末には必ず会ってくれて、たまに花を買ってきてくれた。ガーベラ。オレンジの。花瓶に活けながら「ありがとう」って言ったけど、胸の奥が反応しなかった。
3ヶ月目。彼の寝息を聞きながら、天井を見つめていた。隣にいるのに、一人でいるみたいだった。彼のTシャツから柔軟剤の匂いがして、その匂いを知ってるはずなのに、何も感じない。
——好きって何だっけ。
アプリで出会ったカップルに特有の感覚かもしれない。恋愛の入り口がスワイプで、最初の印象がプロフィール文で、出会いに「物語」がない。合コンで隣の席だったとか、大学の同じゼミだったとか、そういう共有された記憶がない。だから「なぜこの人を好きになったのか」の理由が曖昧なまま、付き合い始める。
ドキドキは消費期限が短い。
理由が曖昧だと、気持ちが冷めた時に何を手がかりに関係を続けたらいいかわからなくなる。「喫茶店が好き」は共通の趣味であって、彼を好きな理由じゃなかった。メロンソーダでむせた姿がかわいかったのは確かだけど、それは最初の一瞬の話だ。
91日目の朝。
日曜日。彼がトーストを焼いていた。バターの匂いがキッチンから漂ってきた。
「ねえ、ちょっと話したいんだけど」
振り返って思うこと
彼はトーストをかじりながら、「うん?」と言った。ジャムが唇の端についていた。
「私たち、なんで付き合ってるんだっけ」
「……え? 急にどうした」
「わかんない。でも、最近ずっと考えてて。リョウくんのこと嫌いじゃない。でも……」
「好きかわかんない?」
彼はトーストを皿に置いて、コーヒーを一口飲んだ。マグカップのふちを指でなぞりながら、「俺も、ちょっと思ってた」って、小さく言った。
その一言で、胸の奥が軽くなったのを感じた。悲しいはずなのに、息が楽になった。お互いが同じことを感じていたという事実が、不思議と安心をくれた。
その日のうちに、二人で話した。泣かなかった。彼も泣かなかった。ただ、さぼうるのクリームソーダの話をして、二人で少し笑って、「楽しかったね、あれ」って彼が言って、「うん」って私が言って、それで終わった。
別れた夜、吉祥寺の井の頭公園をひとりで歩いた。池の水面に街灯が映っていて、きれいだった。冬の夜の空気が頬に冷たくて、マフラーに顔を埋めた。スマホを見たけどLINEは来なかった。来ないとわかっていても見てしまう自分が、少しだけおかしかった。
冷めたことに罪悪感はある。でも、あのまま「なんとなく」を続けていたら、もっと長い時間をお互い無駄にしていた。
91日は、短いけど、嘘じゃなかった。
よくある質問
マッチングアプリで付き合ってからすぐ冷める原因は何ですか?↓
付き合って3ヶ月で気持ちが冷めたら別れるべきですか?↓
アプリで出会ったカップルが長続きしないのは本当ですか?↓
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。