3回目のデートで「好きです、付き合ってください」と言ったのは私だった
彼も私のことが好きなのはわかってた。でも二人ともそれを言い出せないまま、デートだけが続いていた。「もう待てない」と思った瞬間、口から言葉が出た。
3回目のデートの帰りに言った。
自分でも驚いた。言おうと思ってたわけじゃなかった。というか、言う気はなかった。「また彼から来るのを待てばいい」くらいに思っていた。
彼——アプリの名前はHirotoさん——とはwithで出会った。最初のメッセージは私から送った。「映画の話、もっと聞きたいです」と。趣味欄に「邦画、特に是枝作品が好き」と書いてあったのが気になって。私も是枝監督の作品が好きで、特に『そして父になる』で泣いた話をしたら、彼も同じシーンで泣いたと言っていた。
1回目は渋谷のカフェ。2時間半しゃべって、話が止まらなかった。映画の話から、家族の話になって、仕事の話になって、将来どんな生活がしたいかみたいな話まで飛んだ。初対面なのに、妙に近い感じがした。
2回目は代官山。古着屋を見てから、夕方からバルで飲んだ。彼がワインを注いでくれた時、グラスじゃなくて私の手元をちらっと見た。気のせいかもしれないけど、気のせいじゃない気もした。帰り際、駅で「また来月?」と彼が言って、「来月って遠くない? 来週でもいいよ」と私が返したら、「来週にしよう」とすぐ言ってくれた。
3回目は中目黒。川沿いを歩いて、小さなお好み焼き屋に入った。カウンター席で並んで座るやつ。鉄板の前で向かい合えない分、視線がぶつからなくて、むしろそれが話しやすかった。お酒が少し入ってきたころ、ふと気づいた。
私、この人のことが好きだ。
正確には「好きかもしれない」じゃなくて「好きだ」だった。確信。
そして同時に気づいた。
彼も、私のことが好きなんじゃないか。
お好み焼きを切りながら、横目でちらっと彼の横顔を見た。彼も何かを言い出しそうにして、言い出せずにいる気がした。
ああ、この人も待ってるんだ。
二人とも待ってる。私が言うのを、彼が言うのを。このままだと、次もその次も待ち続ける。
店を出て、目黒川沿いを歩いた。夜の川は暗くて、街灯の光だけが揺れていた。少し寒くて、吐く息が白い。
「Hirotoさん」
自分でも思ってなかったタイミングで、声が出た。
「……はい?」
彼が立ち止まった。私も止まった。
「好きです、付き合ってください」
言ってしまった。
彼の顔が一瞬止まった。目が大きくなって、口が少し開いたまま閉じなかった。2秒か3秒、沈黙があった。川の音だけ聞こえてた。
やばい、と思った。のどがカラカラに乾いた。
「……私も好きです」
彼が言った。小さな声で。でも川沿いで風があったのに、ちゃんと聞こえた。
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三軒茶屋のバーを出た夜11時。withで出会ったナオキとの6回目。じりじりと動いて動き切らない空気に、私は先に動くことにした。
「付き合ってください」
なんで私が言ったのに、彼も「付き合ってください」と言ったの。
その後、二人で笑った。なんかもう、笑うしかなかった。「なんで両方が付き合ってくださいって言うの」「いや、お互いそれしか出てこなかった」「めちゃくちゃ丁寧な告白だった」「こんな丁寧な告白初めてした」。
中目黒で二人して笑いながら、でも二人とも耳が赤かった。多分。暗いから見えなかったけど。
後日、友達に話したら「え、女性から言ったの?」と全員に言われた。「別にいいじゃん」と言ったら「確かに」と言われた。
待ってたら彼から言ってくれたかもしれない。でも何回目のデートになってたかはわからない。4回目? 5回目? 10回目?
言葉にしないとわからないことってある。お互いに気持ちがあっても、それだけじゃ始まらないことがある。
誰が先に言うかより、誰かが言うかどうかの方が大事だった。
あの夜の中目黒、川の音と「私も好きです」って彼の小さな声は、しばらく忘れられない気がする。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。