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恋愛体験談エッセイTapple

22歳の深夜23時、震える指で送った一行が、私の恋の始まりになった

Tappleで彼のプロフィールを見て、「旅先でその土地の作家の本を買う」という一文で指が止まった。布団の中で画面を閉じて、また開いて、3回繰り返した後に、初めて自分からメッセージを送った。22歳の深夜23時の話。

22歳・女性の体験
·橘みあ·5分で読める

画面を閉じた。


また開いた。


布団の中で、それを3回繰り返した。


Tappleを使い始めて3ヶ月。私はずっと待つ側だった。女性からメッセージを送らなくてもいい設計になっているから、それに甘えてた。積極的じゃないのは性格のせいじゃなくて、仕様のせいにしてた。今ならそれがわかる。でもあの夜、23時10分に布団の中でスマホを握っていた私は、自分でもよくわからない衝動に突き動かされていた。


彼のプロフィールに、こう書いてあった。


趣味:読書(最近は旅先で買ったその土地の作家の本を読むのが好き)、料理(得意なのは豚の角煮)、写真(フィルムカメラで撮ってます)。


写真は3枚。1枚目は屋久島っぽい濃い緑の中で撮った横顔。2枚目は手元のアップで、古い銀色のカメラを持っている。3枚目だけが顔の写真で、どこかのカフェで少し下を見ていた。


少し下を見てる男に弱い、と今回もそう思った。Pairsで好きになった人も同じ角度だったから、もはや自分の癖だとわかってる。なんで、とは思う。なんでなんだろう、と思いながら、でも手が止まった理由はたぶんそこじゃなかった。


「旅先で買ったその土地の作家の本」。


その発想が、すとんと来た。


私も旅が好きで、観光地を効率よく回るより、その街の空気を吸いながらあてもなく歩き回るタイプで、本屋に必ず寄る。鹿児島に行ったとき、天文館のアーケードの外れに小さな古本屋があって、そこで桜島について書かれたエッセイを見つけた。ページを開いたら桜島の灰の匂いがした気がして——していないかもしれないけど——買って、今も本棚の端に立てている。


彼なら、きっとわかる。


23時10分、「いいね」を押したまま3ヶ月が過ぎていた


その感覚が、理由もなく、でも確かにあった。


「いいね」は送った。でもメッセージは来なかった。


人気なんだろう、と思った。こっちから動かなければ、流れる。マッチングアプリの中に漂って、そのまま見えなくなる。見知らぬ誰かとの間にあった、まだ何にもなっていない可能性が、音もなく消える。


23時10分。


十一月の夜で、窓の外は静かで、部屋はちょっと寒かった。羽毛布団を首まで引き上げて、スマホの画面だけが白く光っていた。


打った。


「プロフィール、旅先で本を買うって書いてありましたよね。私も旅先の本屋に絶対寄るので、なんか勝手に親近感を感じてしまいました」


指が震えていた。


文章を見直したかった。でも見直したら、絶対に送れない気がした。直すたびに言葉が丸くなって、私じゃない誰かが書いた文みたいになる。そういう経験が、なぜかすでにあった。


送信。


息が止まった。喉の奥が一瞬、変な感じになった。既読がついていないのに、10秒おきに画面を開いた。ホーム画面に戻って、また開く。戻って、また開く。バカみたいだとわかってた。でも止められなかった。


10分後、既読。


そして、返信。


「おお! 本屋わかります。先週青森行ったんですけど、まず本屋を調べて旅程を組む感じです。旅先で地元の人が書いた本を買うと、その土地がもっと立体的に見える気がして」


来た。


首の後ろから耳にかけて、一気に熱くなった。布団の中なのに、なんか、暑い。返ってきた、ということと、しかも話が合いそう、ということが、同時に押し寄せてきて、喉が乾いた。うれしい、じゃ喉の奥で言葉が詰まった感覚。なんか、よかった。それだけしか浮かばなかった。


「青森、行ったことないんですけど、どこがよかったですか?」


「奥入瀬渓流は絶対行ってほしいです。あと弘前に素敵な古本屋があって」


「弘前、お城があるところですよね」


「そうです。桜の季節は人が多いけど、冬に行くと静かで全然違う顔してて」


返信が来た。首の後ろから耳にかけて、一気に熱くなった


そのまま1時間、話が続いた。旅の話から、本の話に戻って、好きな作家の話になって、気づいたら0時を過ぎていた。普通に平日だった。翌朝が普通に仕事だった。でも画面を閉じたくなかった。


これ、好きになるやつだ。


そう思った瞬間に、でも、まだ会ってもいない、というもう一つの声も聞こえた。両方、本当だった。


2週間後、初めて会った。渋谷の「Fuglen Tokyo」で待ち合わせて、お互いが好きな本を1冊持ってきてプレゼントし合おう、という彼のアイデアで。私は鹿児島で買ったエッセイを持っていった。彼は沖縄で見つけた、沖縄の建築について書かれた写真集を持ってきた。


交換した瞬間、二人で笑った。


言葉にしなかったけど、なんとなく、ちゃんと合いそうだと思った。コーヒーの匂いのする午後で、窓から代々木公園の方向の木々が見えて、彼はアメリカーノを飲んでいた。私はオレンジジュース。なんでオレンジジュース頼んだんだろうと少し後悔したけど、でも笑った記憶の方が強い。


先にメッセージを送る恐怖は、今もわかる。「無視されたらどうしよう」「変なやつと思われたら」「ブロックされたら」——全部、リアルだった。小さくないと思う、あの怖さ。


でも最悪のケースは「無視される」だけ。それはひどいけれど、私自身は何も変わらない。一方で、送らないままでいたら、確実に何も始まらなかった。


送ったから、会えた。


会ったから、話せた。


話せたから、好きになった。


「仕様に甘える」のをやめた夜、私の恋はそこから始まった。あの震えた指が、全部の入口だった。


怖くて当然。それでも、送った一行が世界を変えることがある。

よくある質問

どのアプリで、どんなきっかけで送ったのですか?
Tappleで、「旅先でその土地の作家の本を買う」という一文のあるプロフィールに手が止まり、22歳の深夜23時10分に初めて自分からDMを送ったとのことです。
それまで自分からメッセージを送らなかったのはなぜですか?
女性がメッセージを送らなくてもいい設計の仕様に甘えていたと振り返っています。積極的じゃないのは性格のせいじゃなく仕様のせいにしていたと、今なら正直に書いています。
震える指で送った結果、どうなったのですか?
「旅先でその土地の作家の本を買う」という一文が恋の始まりになったことが、タイトルと本文から示されています。息が止まるほど緊張しながら送ったDMが、縁を引き寄せた体験談です。

この記事を書いた人

橘みあマッチングアプリ体験談ライター

27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。

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