誤アンマッチした相手をInstagramで探して、フォローリクエストを送った話
スワイプの勢いで消してしまった人が、どうしても気になった。Tinderでは終わったけど、まだ世界は繋がっていた。共通の知人、Instagram、DM。普通じゃないことをした25歳の話。
左にスワイプするつもりが、右にした男性がいる。——ではなく、逆だった。
右にスワイプしようとして、左にした。完全に誤操作。Tinderのあの判定、なぜあんなに敏感なの。スクロールしながらプロフィールを読んでいて、画像の下の部分に指が当たったとき、なぜかそのまま左に流れてしまった。Nope。画面の隅に赤い×が出た。
Tinderで出会って半年経った今でも、あの誤操作の瞬間のことは覚えている。スクロールしながらプロフィールを読んでいて、いいなと思って右スワイプしようとした瞬間に、指が滑った。左に消えていく画面。キョウヘイ、26歳、デザイン系、写真3枚全部自然体でよかった。3枚目はどこかの海で撮ったやつで、笑ってはいなかったけど目が細くなっていて、その感じが良かった。
取り消せない。
Tinderはアンマッチを取り消せない。これが本当に悔しかった。設定で「巻き戻す」ができるんだっけ、と思ってTinderゴールドの説明を開いたら、月額3000円近くした。3000円は出せない。出せないけど悔しかった。
2日間引きずった。名前も職業もなんとなく覚えていた。共通の知人がいたことをプロフィールに書いてあったのも頭に残っていた。確か「ヨシノの友達」という表記があった。
ヨシノ。私の大学の後輩で、今でも年に2回くらい会う子。代官山のカフェで近況報告をする、そういう関係。
「ヨシノ、キョウヘイくんって人知ってる?」
LINEを送った。夜中の1時。
「キョウ? 知ってるけど、どこで知ったの」
「Tinderに出てきて、でも誤アンマッチして……」
「え、やばい笑。いい人だよ。Instagram教えようか」
止まった。
そこから先に進む必要が、本当にあるのか。いや、でも。見ず知らずの人のInstagramをフォローして、DMで「Tinderで誤アンマッチしたんですが」とメッセージするの?それって普通じゃない、という気持ちと、あのプロフィールの3枚目の目が細くなってる写真を思い出す気持ちが、2日間ずっと拮抗していた。
「教えて」
アカウントを見た。普通のアカウント。カフェの写真と風景写真が多い。フォロワー700人弱。写真の色味が揃っていて、几帳面な人なんだなと思った。中目黒の写真があった。代官山のレコード屋の写真があった。歩いているエリアが自分と近い。
フォローリクエストを送った。
翌日、承認。
DMを送った。「突然すみません。ヨシノから教えてもらいました。Tinderで誤アンマッチしてしまって、申し訳なくてメッセージしました」。
既読。数分後に返信。
「あ、もしかして先週? マッチしたと思ったら消えたのがいて、なんだろうって思ってました笑」
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4回目のデートで飲みすぎた。帰りの中央線で気づいたら彼の肩に乗っかって眠っていた。起こしてくれなかった。1駅過ぎた荻窪で目が覚めた。
「それです。本当にすみません、スワイプの操作が下手で」
「全然大丈夫ですよ。わざわざ連絡してくれてありがとうございます。面白い経緯ですね笑」
面白い経緯。その返し方が好きだった。変とか珍しいとかじゃなくて、面白い。変な出来事を「面白い」に変換できる人は、なんか信用できる気がする。
そこからDMでやりとりして、2週間後に会った。新宿の和食屋。「誤アンマッチ経緯」を乾杯トーストにして笑った。「ヨシノ経由で連絡が来た時、どう思いましたか」と聞いたら「ちょっと笑いました、でもなんか好印象でした」と言われた。「好印象なんですか」「だって普通そこまでしないじゃないですか」「普通じゃないですよね、確かに」「それがよかったんですよ」とキョウヘイが言って、グラスを上げた。
その3ヶ月後に付き合った。今もまだ付き合っている。
中目黒を一緒に歩くたびに、「Instagramでここの写真見たことある」と言ってしまう。「ストーカーみたいなこと言わないで」と毎回言われる。でも実際、フォロー前にプロフィールを30分くらい見ていたので、否定できない。
「普通じゃないことをしたな」と思ったのは、フォローリクエストを送った後だった。でも後悔はなかった。気になった人を逃さないためなら、普通じゃないことを一個くらいするのは、全然ありだと今も思っている。
Tinderは縁を切ったかもしれないけど、世界が消えたわけじゃなかった。
この記事を書いた人
27歳・東京。Pairs・with・Tinder・Omiai・タップルを延べ3年間使用。マッチングアプリで3人と出会い、2回失恋した経験をもとに執筆。失恋した夜に誰かのブログで楽になった経験から、このサイトを始めた。